記事の目的
アメリカ在住の日本人を雇用するときの社会保険の留意点を理解すること
テレワークが普及し、海外に住んでいる日本人を雇用したいまたは配偶者の海外赴任の帯同で海外に行くが働き続けてほしいという企業からの問い合わせが増えております。海外在住の日本人雇用(以下、「越境テレワーク」)については法的な整備がなく、厚生労働省からの通達がない現状です。そこで、弊所であった一例を紹介します。管轄の年金事務所や労基署、ハローワークによって見解が異なる部分があるので、実務上は確認しながら進めていきます。
1. アメリカ在住の人の雇用
アメリカ在住の人を雇用するとは、アメリカの自宅からテレワークで日本の企業で働く従業員です。アメリカに事業所があり、日本の企業から赴任の命を受けて駐在する人はここでは含まれていません。海外にいながらも日本の法人に雇用され、日本の企業から給与が支給されます。弊所の事例では、配偶者(夫)の帯同で会社を退職してアメリカに在住中の妻で、日本の企業で新たに採用される従業員です。
アメリカと一口にいっても州によって法律が異なる場合があり、今回はカリフォルニア州の事例を紹介します。
2. 日本の健康保険・厚生年金保険
配偶者の帯同で会社を退職し、現在は配偶者の会社の社会保険の扶養となっています。配偶者の会社はアメリカに事業所がある、いわゆる駐在のため、日米社会保障協定により日本の社会保険は継続となっており、妻は社会保険の扶養の範囲内で就労します。そのため、日本の健康保険・厚生年金を妻も継続となります。アメリカは医療費が高額なのはよく知られているところであり、そのためアメリカの民間の医療保険に別途加入はしています。
3. 就労のためのビザ
アメリカの自宅からテレワークをするために、就労資格となるJ2ビザの取得が必要です。アメリカ在住の方を雇用したいという場合、社会保険関係よりもまずビザは申請しているのか、取得可能なのかの確認が必要です。
4. 日本の雇用保険
週に20時間未満の労働契約のためそもそも日本の雇用保険の要件に当てはまらず雇用保険に加入はしません。
また、海外在住の人は雇用保険に入らないという、行政手引があります。個別事情にもよりますが、退職して雇用保険に加入をしておらず、新たに雇用されるため日本の雇用保険に加入することは行政手引に従って難しいという考えられます。
雇用保険業務取扱要領(行政手引)
ニ 国外で就労する者
b その者が日本国の領域外にある適用事業主の支店、出張所等に転勤した場合には、被保険者となる。現地で採用される者は、国籍のいかんにかかわらず被保険者とならない。
5. 労災保険
労災保険も個別の事情により異なり、労災保険に加入するか労基署との調整をします。労基署と調整した結果、今回のケースは労災保険は加入となりました。