4月は育休から復帰する従業員が多い月。最初は時短で働くとのことですが、何か特別な社会保険手続きは必要なのでしょうか。
こんな疑問を持つ人事労務担当者向けの記事を書きました。
目次
本記事の内容
1. 3歳未満の子供をもつ従業員が時短で働く場合、社会保険料の特例があります
2. 必要な届出
3. 注意点
1. 3歳未満の子供をもつ従業員が時短で働く場合、社会保険料の特例があります
3歳未満の子供をもつ従業員で、時短を希望する従業員には社会保険料の特例があります。これを、養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置といいます。育休から復帰した従業員が時短で働く場合、育休をとる前よりも給与が下がります。給与が下がると、支払う健康保険料・厚生年金保険料も下がります。そして、支払う厚生年金保険料が下がると、将来の年金額も下がります。この将来の年金額が下がることを防止するために措置が設けられました。
どんな特例
育休をとる前の給与をもとに算出された社会保険料を払ったとみなし、これが将来の年金額に反映されます。実際に従業員と会社が払う厚生年金保険料は、時短勤務で給与が下がるので下がりますが、将来の年金額に反映される社会保険料の額は育休をとる前の社会保険料額とみなされます。
具体的には、育休をとる前の給与が25万円、育休から復帰し時短勤務をしたときの給与を20万円とします。厚生年金保険料は、育休をとる前は21,960円(従業員負担分)、18,300円(従業員負担分)となります。育休から復帰し時短勤務をしている際の支払う保険料は18,300円ですが、将来の年金額に反映される保険料は高い方の21,960円になります。つまり、支払う保険料は安くなるのに、給与が高い時に払った高い保険料が将来の年金額に反映されます。
時短で働く従業員にとっては、支払う保険料は少なくなったのに、保険料が高い時としてみなされ年金額に反映されるのは良いことですよね。
どんなとき
- 養育開始月の前月に厚生年金保険に加入していること
- 養育開始月の前月に厚生年金保険の被保険者でない場合は、その月前1年以内に厚生年金に加入していること
- 育休から復帰し、時短勤務をして給与が下がったこと
- 3歳未満の子供を育てていること
2. 必要な届出
「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を年金事務所に提出します。
出典 日本年金機構「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」
必要な添付書類は以下の通りです。
- 戸籍謄(抄)本、または戸籍記載事項証明書
- 住⺠票の写し原本
3. 注意点
従業員からの申し出が必要です
従業員が「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を会社に提出する必要があります。従業員からの申し出がないとこのみなし措置を受けられません。従業員からの申し出がなければ会社は何もしなくても咎められないですが、育休を復帰した社員でこのみなし措置を知っている人は少ないと思います。育休を復帰した従業員の方にこのみなし措置の案内を出すと、皆さん知らなかったと言います。経営者や人事労務担当者が積極的に案内して届出をだすことが私は親切だと思います。
なお、すぐに申し出がなくて3歳になってしまった!という場合でも、申し出があった前月までの2年間については認められます。
みなし措置は3歳までです
3歳の誕生日のある月の前月までがみなし措置の対象期間です。
いかがでしたでしょうか。このみなし措置を知らない従業員がほとんどです。従業員からの申し出がないと適用されませんが、知らずに適用されないことが多いので、人事労務担当者から案内して周知することが従業員にとって良いのではと思います。
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